関西大学システム理工学部
近年の無線通信技術は目覚ましい進歩を遂げ,目に見えない場面で我々の生活を支えています.例えば,我々が普段利用するスマートフォンなどの携帯端末にはLTEやWi-Fi等の技術が使用されています.また,災害などの非常時の通信やIoT (Internet of Things) に代表されるセンサネットワーク,公共無線LAN (Local Area Network) など様々な場面で無線通信技術は利用されています.この技術を駆使して構築される無線ネットワーク(ワイヤレスネットワーク)は有線とは異なり,電波干渉やトラヒック集中など様々な点で課題があります.
総務省の情報通信白書において,モバイル端末による通信量は年間約二倍のペースで増加していることが報告されています.この通信量の増大に対して,電波や通信資源を効率的に利用する無線通信・ネットワーク技術の開発がとても重要です.またIoTでは,パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの通信機器に限らず,あらゆる「モノ」がインターネットに接続されることにより,膨大なデータがインターネットへ流通して輻輳が発生します.加えて,その「モノ」には省電力性が求められます.そのため,IoTを実現するためには,通信・電力効率の良いネットワーク技術が必要となります.
当研究室では,モバイルネットワークやセンサネットワークなどの多様なワイヤレスネットワークを対象とした研究を行っています.特に,これらのネットワークの抱える課題を解決するために,前述のコンテンツオリエンテッドネットワークをワイヤレスネットワークに適用する研究を積極的に取り組んでいます.
より詳細な研究内容については,以下をご覧ください.
近年,タブレット端末やスマートフォンなどの無線端末からのインターネット接続が増加し,その接続方法として無線LANが広く普及しています.しかし,1つの無線LAN基地局がカバーできる電波範囲には限界があります.この問題解決策として,ユーザの端末を中継機,つまり,ルータとして使用する無線マルチホップネットワークが注目を集されています.無線マルチホップネットワークにおいて,ある端末 (ユーザ) がコンテンツを取得する場合,一般的には無線LAN基地局となるゲートウェイノード (GW) を介して,無線マルチホップネットワーク外のインターネットに接続されているコンテンツサーバにアクセスします.そのため,全てのコンテンツ要求とコンテンツダウンロードはGWを介して実行されるため,GW付近での干渉や輻輳などにより無線マルチホップネットワーク全体の性能劣化に繋がることが懸念されています.
この問題に対する一つの解決策として,ネットワーク内の中継端末にキャッシュ機能を設ける,キャッシュネットワークの適用が挙げられます.しかし,キャッシュネットワークには,コンテンツ要求がGWに向かう途中の最短経路(default-path)上のキャッシュのみしか利用できないという制限があります.この制限を解消し,default-path上に存在しないキャッシュ (off-pathキャッシュ) へ要求を誘導し,ネットワーク内のキャッシュを有効利用する手法として,インネットワーク誘導方式であるBreadcrumbsが提案されています.Breadcrumbs方式においては、ネットワーク内の中継端末がコンテンツを転送する際に、コンテンツのキャッシュとともに``Breadcrumbs’’と呼ばれる,ダウンロード方向を示す誘導情報を残します.これにより,新たなコンテンツ要求はこの``Breadcrumbs’’を辿ることによりoff-pathのキャッシュを探索することが可能となります.
我々は,このBreadcrumbs方式を無線マルチホップネットワークに導入することで,GWにかかるトラヒック負荷を軽減しネットワーク全体の性能改善を目標として研究を行っています.
東日本大震災の経験を受け,災害時における通信技術に関心が高まっています.既存の通信インフラ設備が地震等の大規模災害により破損した場合,DNS (Domain Name System) の機能が利用できなくなり,インターネットへのアクセスが途絶え,安否情報などのコンテンツを取得することが出来なくなります.本研究では,この問題を解決するためにCCN (Content-Centric Networking) を情報流通基盤として利用します.これにより,災害により通信インフラ設備が破損した劣通信環境においても情報取得が可能となります.しかし,既存のCCNをそのまま適用した場合,劣通信環境特有の断続的なリンクによりコンテンツ要求の冗長な再送が発生します.当研究室では,この問題に対応するため,断続的なリンクを認識するための動的なルーチングプロトコルと,そのルーチングプロトコルから得られるリンク接続情報に基づいたパケット転送制御を提案しています.これらにより,ユーザの消費電力やコンテンツ取得にかかる時間の低減が可能となる事を示しています.